コラム

CEマークの「自己宣言」と「認証」の違いとは?おさえておくべきマーキングの基本

EU(欧州連合)には「EU一般データ保護規則(GDPR)」や「CEマーキング」など、加盟諸国間で遵守すべき法律が定められています。日本でビジネスをする自社には関係がない、と思われる方もいるかもしれませんが、グローバルサプライチェーンの発達した今では、多くの日本企業も避けて通れない課題になっていると言えます。

今回は、CEマークについて掘り下げ、CEマーキングの概要から「自己宣言」と「認証」の違いや、自己宣言書の発行方法、自己宣言に潜むリスクについて解説します。

そもそもCEマーキングとは

CEマーキングとは、製造者に義務付けられ、EU整合法令に製品が適合していることを示すマーク(CEマーク)を表示する制度のことです。CEマーキングは、EU加盟国間における技術的な貿易障壁を撤廃し、国家間で異なる規格を統一することで安全性が保証された製品の円滑な流通を実現することを目的としています。

CEマーキングが必要となる国や地域は、EU加盟国27カ国に加え、EFTA(欧州自由貿易連合)のアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイス(スイスでは義務とはなっていませんがMRA相互承認協定によりCEマークが認められる)、そしてトルコの計32カ国です。

CEマーキングをしていない(CEマークが付いていない)製品は、前述の国に対して上市することができません。すなわち製品をEU市場に持ち込む際に、通関段階で拒否されるケースなどが起こりえます。そのため、日本企業の海外進出においては、(対象製品に関しては)CEマーキングが必須条件であると認識しておくことが重要です。

 

CEマーキングの「自己宣言」と「認証」の違い

CEマーキングによってCEマークを表示するためには、各製品に適用される各指令を製造者自身で選定し、整合規格を用いて指令ごとの適合性を証明することが義務付けられています。この適合性の証明には「自己宣言」と「認証」の2つの方法があり、それぞれ次のような違いがあります。

CEマーキング「自己宣言」

自己宣言は自社が主体となり検査・試験を行い、指令の要求事項への適合性を自ら証明し宣言することです。指令への適合性評価は「評価モジュール」として分けられており、評価モジュールはA~Hまで存在しています。

そのうち、自己宣言ではモジュールA方式による検証が行われます。自社で規格への適合や技術文書の整備などを自己評価し、自身で「適合宣言書」を作成する方式です。CEマーキングが必要な製品のかなりの割合は自己宣言であるといわれています。

自己宣言は自社で完結できるとはいえ、CEマーキングに対する専門的な知識・スキルを有していなければ適切な対応ができない可能性があります。CEマーキングはEU加盟国における法律であるため、適切な対応をしていない場合には法律違反として罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。

CEマーキング「第三者認証」

認証は評価モジュールのA以外が適用される場合に、第三者によって指令の適合性を証明してもらうことです。欧州の認定機関(NB:Notified Body)に審査を依頼し、適合性に問題がないことを証明します。認証が必須となるのはリスクが高い製品に該当する指令です。例えば、医療機器などはノーティファイドボディによる審査が必須となります。

認証では第三者に検証を依頼することになるため、検証費用や審査費用などの追加コストが発生します。加えて、審査の時間も発生するため、適合完了までに要する時間が長くなる傾向にあることも覚えておかなければなりません。

さらに、第三者によって適合性を証明してもらったとしても、最終的に適合宣言を行なうのは自社です。EU法では「トラブルが発生した場合、たとえ第三者認証の証明書があっても全責任はメーカー側にある」と規定されており、第三者から認証を受けてもCEマーキングにおける責任の所在は変わりません。

 

CEマーキング自己宣言書の発行方法

 

自己宣言・第三者認証を問わず、CEマーキングを行う場合、自己宣言書の発行が必要です。自己宣言書発行の大まかな流れは次のとおりとなります。

  1. 製品の状況確認、適合性評価モジュールの決定
  2. 製品の検査・試験
  3. (必要に応じて)ノーティファイドボディによる認証を受ける
  4. 技術文書の作成
  5. EU適合宣言書を作成(自己宣言書の発行)
  6. CEマークの貼付

製品の適合性を証明するためには、設計・製造に関するエビデンス資料などを技術ファイル(テクニカルファイルやTCFと呼ばれます)にまとめる必要があります。技術文書の内容は関連する製品ごとにEU整合法令によって定められており、一般的には設計・構造・製品の運用について記載しなければなりません。技術文書に含める文書の例としては次のようなものが挙げられます。

  • 製品仕様書
  • カタログ
  • 電気図面・ブロック図・機械図面
  • 電気部品パーツリスト
  • 取扱説明書
  • リスクアセスメント
  • 適合評価テストレポート

など

また、技術文書は製品の最終製造日から最低10年間保管する必要があります。製品を取り巻く環境も変わり続けるため、定期的に技術文書を見直すことも必要でしょう。

 

CEマーキング自己宣言に伴うリスク

CEマーキングは自社ですべてを完結できる自己宣言の割合が多くなっていますが、リスクも伴うため注意が必要です。そのリスクとは、第三者による客観的な評価を経ないことで、適合性評価手順に誤りがあったり、また技術文書の不備などによるトラブルの可能性が考えられます。それによる訴訟のリスクなども考えられます。

現在、EU加盟国を含む32カ国でCEマーキングは必須とされており、それらの国においてCEマーキングに関する重大な違反が発覚したりした場合には、加盟国の国内法に照らし処罰されます。罰金・販売停止・責任者の禁固刑などの罰則が適用されるリスクがあるため注意しましょう。

このようなリスクを回避するために、ノーティファイドボディによる第三者認証という手段も選択肢の一つとなりますが、認証機関は評価の公平性を保つために、あくまでも適合・不適合を判断するだけで、適合のためのアドバイスなどを行なうことは禁止されています。 具体的にどうすれば適合できるのか、といった部分はコンサルティングにあたるため教えてもらえません。そのため、認証機関だけでなく、専門のコンサルティング会社などとも連携してしっかりとCEマーキングに対応することをおすすめします。

 

まとめ

CEマーキングは、EUで販売される製品がEUの基準に適合していることを示すCEマークを表示する制度のことです。EU圏以外でも、例えばアジアや中東などもCEマーキングの制度を倣った制度設計をしているところも多いので、まずしっかりとCEマーキングに対応することが、その後のスムーズな世界展開への足掛かりとなるでしょう。

CEマーキングの適合手段として、大きく「自己宣言」と「第三者認証」の2つの方法があります。自社で検査・試験を行い、適合性を自ら証明する自己宣言は、CEマーキングが必要な製品の約8割で行われているといわれています。対して、認証は欧州のノーティファイドボディに審査を依頼する方法です。

CEマーキングに関する重大な違反が発覚したりすると、最悪の場合には裁判を起こされて罰金や販売停止、禁錮刑などの罰則に処されるリスクがあります。そのようなリスクを回避するためにも、第三者機関を利用したり、専門のコンサルティング会社と連携して対応を進めるとよいでしょう。

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