コラム

CEマーク取得に関する基礎知識!取得方法から費用・期間、注意点をまとめて解説

CEマークはEUの法律が定める基準を満たすことを表す欧州基準適合マークです。EU加盟国をはじめ、一部の非EU加盟国でも製品を販売する際に表示することが義務付けられています。日本企業でも製品の輸出を考えている場合には、遵守すべき法令であるためしっかりと理解することが重要です。

この記事では、まずCEマークの基礎知識を解説し、取得方法や費用・期間と併せて注意点を解説します。

CEマーキングとは

CEマーキングとは、CEマークを表示する制度・フレームワークを表します。CEマーキングは1993年から開始され、EU加盟国の、国家間における製品の安全基準の統一化を図るものです。一定の安全水準を確保すること、製品が加盟国内で自由に流通できるようにすることを目的としています。

EU加盟国で流通する、対象となる製品はCEマークの貼り付けが義務付けられており、CEマーク無しで製品を流通させることは認められていません。CEマークに関する指令・規則は全部で26種類あり(2022年末時点)、製品の種類ごとに適用となる指令は異なります。また、1製品につき1指令というわけではなく、製品によっては複数の指令の適用が必要な場合もあるため注意しましょう。

まとめると、CEマークは欧州基準適合マークそのものであり、CEマークを表示することや表示するために必要な対応などをCEマーキングと呼びます。

CEマークが必要な国

CEマークが必要となる国は次に挙げる合計32カ国です。

EU加盟国

ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、スロヴァキア、フィンランド、スウェーデン

EU加盟国以外

アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイス ー(EFTA)、トルコ(加盟候補国)

このなかで、スイスだけは個別の相互承認協定(MRA)による相互の適合性評価を承認しています。

CEマークが必要な製品

CEマークが必要かどうかは、流通・販売しようとする製品が「ニューアプローチ指令」に該当しているかどうかを事前に調べる必要があります。典型的な製品の例としては次のようなものが挙げられます。

  • 医療機器
  • 電気電子機器
  • 建設資材
  • 玩具

など

また、前述のとおりCEマークに関する指令・規則は全部で26種類存在します。製品が該当する指令・規則は一つだけとは限らず、複数の指令・規則に該当する場合にはすべての要求を満たす必要があるため注意が必要です。

CEマークの取得方法

CEマークを取得する流れは、自身で検査・試験を行い指令の適合性を証明して宣言する「自己宣言」と、第三者(認証機関)によって適合性を証明してもらう「認証」の2種類に大きく分けられます。どちらの場合も、最終的には適合宣言を行なうのは自社であり、認証を受けたとしても責任の所在は変わりません。

取得の流れは自己宣言・認証のどちらの場合も同じですが、適合のための条件は製品ごとに大きく異なります。ここでは、CEマークを取得するまでの大まかな流れを簡単に見ていきましょう。

*(これまでの説明の通り、CEマーキングの制度は自ら適合を宣言してCEマークを貼ることであり、第三者からCEマークを与えられるわけではないので「取得する」というのは正確な表現ではありませんが、このページでは便宜的に「取得する」としています。)

CEマーク取得の流れ

1.CEマーキングの指令・規則に該当するかの確認

ここまでにお話したとおり、CEマークの指令・規則は26種類存在します。はじめに実施することは、製品の仕様と指令・規則の適用範囲(スコープ)を確認し、どの指令が適用となるのかを明確にすることです。

2.整合規格の選択

指令の要求事項は抽象的である場合が多いため、整合規格への適合性を確認することで、指令要求への適合推定を得る、という方法が一般的です。指令・規則ごとに欧州整合規格が定められているため、製品が該当する規格を特定します。また、このときも製品に適用する規格は一つとは限りません。

*欧州整合規格とは
指令・規則の具体的な要求や仕様を定めた欧州統一の規格が整合規格です。整合規格は、欧州標準化委員会(CEN)、欧州電気標準化委員会(CENELEC)、欧州電気通信標準化機構(ETSI)によって欧州EN規格の中から選定されます。

3.認証機関による第三者評価の必要性を確認

適合性を評価する際には、指令ごとに定められている適合性評価手続き(モジュール)のなかから、どのモジュールを採用するのかを決定する必要があります。自己宣言の場合はモジュールA(内部生産管理)を採用しますが、モジュールA以外が適用される場合には、欧州の認定機関NB(Notified Body・ノーティファイドボディ)に審査を依頼します。モジュールの選定と併せて、第三者評価の必要性もこの段階で確認しましょう。

4.製品をテストし規格への適合性を確認

指令・モジュールの選定後は、規格の要求事項を満たしているかを一つずつ検証・評価します。製品の設計確認からユーザーの使用状況を想定してのリスクアセスメント、取扱説明書の作成も行います。

5.技術文書の作成

検証・評価結果やその根拠となるさまざまな資料を技術文書(テクニカルファイル)として取りまとめます。技術文書には、テストレポート・製品仕様書・リスクアセスメント・取扱説明書などが含まれます。

6.適合宣言書(DoC)の作成

製品に適用される指令すべての適合を確認できたら、適合宣言書(DoC)を作成します。別名自己宣言書とも呼ばれ、「この製品はCEマーキングの指令に準拠したものである」と宣言する書類です。複数の指令が適用される場合でも、適合宣言書は1枚の宣言書にまとめ、その中に指令や適合評価に用いた規格名などを記載します。

7.CEマーキングの貼付

ここまでの準備ができたら、実際に製品にCEマークを貼り付けることができます。製品上に貼り付けることが困難な場合は、パッケージや同梱文書へ代替表示することも可能です。

8.CEマーキング製品を出荷

製品にCEマークを貼り付けられれば、EU諸国などへ製品を輸出・出荷して流通させることが可能です。ただし、生産を続ける際には規格の改定などの最新情報をチェックし、随時関連文書を更新するなどの維持管理が必要になります。

CEマーク取得の費用

CEマーキングは製品ごとに適用する指令や規格が異なり、製品の種類や状態、企業の体制などに違いがあるように、どのくらいの費用がかかるかは一概には言い切れません。製品の適用指令が少なく、適合性のチェックもスムーズにいけば数十万円程度で済む場合もあります。

少なくとも、自己宣言の場合は自社のリソースだけで進められるため、第三者評価が必要な認証よりもコストは抑えられます。欧州のノーティファイドボディへ検証を依頼する際には、試験や審査費用などのコストが発生することになりますが、こちらも費用感は一概に言えません。

認証機関はあくまでも適合の合否を客観的にチェックするだけであり、適合のためのアドバイスなどは禁止されています。CEマーク取得の費用感について知りたい場合には、CEマークの取得に関するコンサルティングを提供する企業へ問い合わせることをおすすめします。

CEマーク取得の期間

費用と同じように取得までの期間も一概には言い切れません。CEマークに関する知見を社内で持っており、製品も完成した状態で自己宣言する場合であれば、製品評価を実施するだけであるため、そこまで期間は必要ないでしょう。しかし、ノーティファイドボディへの検証を依頼する場合などは別途認証にかかる期間が必要になり、全体的な期間は長くなってしまいます。

CEマークのコンサルティング会社に任せる場合、評価試験からテストレポート発行、技術文書の作成まで3ヵ月程度で完了することもあります。対応にかかる時間の多くを占めるのは、不適合箇所の設計変更や書類作成で、主にはメーカー側での対応に多くの時間を割くことになります。

費用と併せて、CEマーク取得の期間についてもコンサルティング会社に問い合わせて確認することをおすすめします。

CEマーキング実施に関しての注意点

CEマーキングを実施する際には、いくつか注意すべき点が存在します。そのなかでも、特に注意するべき点を2つ解説します。

技術文書と適合宣言書を10年間保管

CEマーキングの実施にあたり作成した技術文書と適合宣言書は、製品が最後に生産されてから10年間の保管が必要です。また、製品を製造し続ける場合には、技術文書を適宜最新の状態に保つ必要があります。適合宣言に使用している指令や規格は変わる可能性があり、常に最新の状態を把握して対応しなければなりません。

通常は指令や規格が変更される際には猶予期間が設けられるため、その間に修正することになります。CEマーキングを実施する際には、技術文書を常に最新の状態に保ち、最終製造日から10年間は適合宣言書と併せて保管する必要がある点は覚えておきましょう。

CEマーキングに違反した際は罰則がある

CEマーキングを実施する際にもう一つ気をつけたい点は、違反した場合に罰則が存在することです。CEマークの不正表示や指令に適合していない場合、ドキュメントに不備がある場合など、適合していないことが発覚すれば処罰の対象となります。

重大な違反が発覚した場合には、EU加盟国の国内法に違反する可能性があり、次のような罰則を受ける可能性があります。

  • 出荷、販売の停止
  • 製品回収
  • 罰金
  • 市場からの撤収
  • 不正メーカーの公開
  • 適合先生書にサインした人物の拘置処置

など

違反した場合には企業としての信頼を失うことにもつながるため、適切なCEマーキングの実施が求められます。

よくある質問

国内製品をCEマーキング対応にできますか?

国内製品もCEマーキングに対応できます。ただし、電源電圧が異なることをはじめ、さまざまな部分で規格に適合できていない可能性があるため、専門家に依頼してギャップ分析をすることがおすすめです。

CEマークはどこに貼ったらいいですか?

CEマークは製品や製造銘板に見やすく・読みやすく・消えにくいように表示する必要があります。製品が小さく直接貼り付けることが難しい場合には、梱包や同梱の文書に表示することも可能です。

ブルーガイドとは何ですか?

ブルーガイドとは、EUの製品安全に関する規則の理解を深めることを目的とした欧州委員会が発行するガイドです。ブルーガイドの最新版は2022年版であり、新しい法的枠組みに沿ってドローンなども追加されています。
弊社ではブルーガイドの最新版の変更点について解説したガイド本のダウンロードをご提供しております。

参照 手引書ダウンロード

まとめ

CEマーキングはEU加盟国を中心とした32ヵ国において、国家間における製品の安全基準の統一化・製品の自由流通を目的として用いられている制度です。CEマークが必要な製品は多岐にわたり、医療機器から玩具までさまざまであり、基本的には多くの製品は、EU加盟国において流通させる場合は必要と考えてよいでしょう。

CEマークの取得に関する費用や期間は、製品の種類や適合する指令によって異なるため一概には言い切れません。CEマーキングに関する知見がない場合には、専門のコンサルティング会社に相談し、見積もりを取ることをおすすめします。

CEマーキングに違反した場合には罰則も存在することからも、一度CEマーキングに知見のあるコンサルティング会社へ相談することを考えてみてはいかがでしょうか。