コラム

CEマーキングの対象外製品とは? 部品・組み込み製品の取り扱いまで解説

グローバル化が進むなか、海外へ製品を輸出する機会も増えています。その際に注意すべき点は各国の基準・規制にしっかりと準拠することです。ヨーロッパ諸国に輸出する際には「CEマーク」が欠かせません。CEマークの存在は知っていても、対象製品と対象外製品の違いについてはよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、CEマーキングの対象・対象外の製品について、部品や組み込み製品の取り扱いと併せて解説します。

CEマークとは

CEマークとは欧州基準適合マークのことです。CEマークは、EU加盟国を中心とした32カ国で流通する、対象となる製品への貼り付けが義務付けられています。CEマーキングとは、CEマークを表示する制度やフレームワークのことであり、欧州経済領域およびトルコ市場内の自由移動を可能にするものです。

CEマーキングをしていない製品は、前述の国に対して輸出をする際、通関拒否等のリスクを伴うため、日本企業の欧州進出において避けては通れない制度と言って良いでしょう。

CEマーク対象と対象外の違い

CEマークの対象か対象外となるかを判断するには、CEマーキング 関連の指令・規則の対象範囲に製品が含まれるかどうかをひとつずつ確認していく必要があります。

CEマークが必要な概念と製品の例

CEマーキングが必要となる典型的な製品の例としては次のようなものが挙げられます。

  • 産業機械
  • 電気電子機器
  • 医療機器
  • 建設資材
  • 玩具

など

CEマークの対象となる指令・規則は、現在のところ全部で26種類(注1)存在しており、貴社製品が適用すべき指令・規則は一つだけとは限りません。当該製品に対し、指令・規則を一つずつチェックして該当するか否かを判断する必要があります。
(注1)随時変更あり
一方CEマークの対象とならない指令は、例えばWEEE電気・電子廃棄物指令や、GPSD一般製品安全指令などが挙げられます。

CEマーク対象外とされる製品の例(機械指令の場合)

また機械の場合、CEマーキングはほとんどの製品に必要です。しかし一部の機械は適用の対象外となっています。これらは機械指令 第1条 2項に規定されています。

  • CEマーキング対象の保守部品
  • ジェットコースター、メリーゴーランドなどの催し物会場/遊園地で使用される専用装置
  • 原子力用に特別に設計され使用される機械で、故障した際に放射線を放出する可能性があるもの
  • 兵器類
  • 競技会でのみ使用を意図している自動車
  • 空路、水路、鉄道網による輸送手段
  • 鉱山用の巻上装置

など

このように一部の機械は対象外となるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。

部品や組み込み製品にCEマークは必要?

CEマーキングは原則的に最終製品が対象です。しかし、部品・組み込み製品でもCEマーキングが必要になる場合があります。部品は大きく分類すると次の3種類に分けられます。

  1. 電気機器を搭載しておらず、電気/空圧/油圧で動作しない部品
  2. 電気機器を搭載しているが、単独では使用されない部品
  3. 電気機器を搭載しておらず、電気/空圧/油圧などで動作する部品

このなかで2、3はCEマーキングの対象となる可能性があります。

部品や組み込み製品にCEマークが必要な場合

「2. 電気機器を搭載しているが、単独では使用されない部品」の場合、「安全構成部品」である場合や単独で市場に投入される場合はCEマークの対象となります。安全構成部品は、次の4つの全てに当てはまる部品です。

  1. 安全機能を実行する役目をする
  2. 単独で市場に置かれる
  3. その装置の故障、誤動作が人の安全を危険に晒す
  4. 機械が機能するためには不要であり、機会が機能するためには通常の構成部品で代用可能

代表的な製品の例としては、スイッチや電源ユニットなどが挙げられるでしょう。

また「3. 電気機器を搭載しておらず、電気/空圧/油圧などで動作する部品」は、主に半完成品(組み込み製品)の分類となり、基本的にはCEマークの対象となります。代表的な製品の例としては、ミッション、ギア、掘削用ヘッドなどが挙げられます。

機械指令から適用除外される製品

先程軽く触れましたが、CEマーキングの適用対象外となる製品の例として、機械指令から適用除外される製品が挙げられます。

機械指令第1条2項による適用除外製品

機械指令のなかでは具体的に適用除外となる製品が記載されています。公開されている文書のなかから、適用除外となる製品についての部分を翻訳したものは次のとおりです。

(a)同一のコンポーネントを交換するためのスペアパーツとして使用することを目的とした安全コンポーネントで、元の機械のメーカーから供給されるもの

(b)催し会場/遊園地で使用するための特定の機器

(c)原子力目的のために特別に設計または使用される機械で、故障した場合に放射能が放出される可能性があるもの

(d)銃器を含む武器

(e)以下の輸送手段

—指令2003/37/ECの対象となるリスクに対応する農業用および林業用トラクター(これらの車両に搭載されている機械を除く)
—理事会指令70/156/EECにてカバーされる自動車及びトレーラー(これらの車両に搭載される機械は除く)
—理事会指令2002/24/ECにてカバーされる2輪又は3輪自動車(これらの車両に搭載される機械は除く)
—競技専用自動車
—航空、水上および鉄道網による輸送手段(これらの輸送手段に搭載された機械を除く)

(f)海上船舶および移動式オフショアユニット、およびそのような船舶またはユニットに搭載された機械

(g)軍事または警察の目的のために特別に設計および構築された機械

(h)実験室で一時的に使用するための研究目的のために特別に設計および構築された機械

(i)鉱山用の巻上装置

(j)芸術公演中にパフォーマーを動かすことを目的とした機械

(k)以下の領域に該当する電気及び電子製品で、それらが低電圧指令にてカバーされるもの

—家庭用の家電製品
—オーディオおよびビデオ機器
—情報技術機器
—通常のオフィス機械
—低電圧開閉装置および制御装置
—電動機

(l)次の種類の高電圧電気機器

—開閉装置および制御装置
—トランスフォーマー(変圧器)

引用:DIRECTIVE 2006/42/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL

機械指令に該当しない製品の例

機械指令第1条2項に挙げられている製品の傾向から、一般市場に流通するものでない場合は該当しないと考えてよいでしょう。遊園地などで使用する特定の機器や輸送手段、保守製品などは機械指令に該当しません。具体的には、ギア・ミッション・変圧器・スイッチ・電源ユニット・掘削ヘッドなどが挙げられます。

よくある質問

内部部品の適合宣言書・技術文書がない場合でも大丈夫ですか?

CEマーキングの対象は原則的に最終製品です。最終製品への組み込みを意図した部品であれば不要となる場合がほとんどですが、動力を持ち単独で動作する部品を輸出し、EU加盟国などで組み立てる場合にはCEマーキングが必要となる場合があります。

ケーブルはCEマークの対象外になりますか?

ケーブルもCEマークの対象です。AC50~1000V/DC75~1500Vの電圧範囲で設計されたケーブル・電線にはCEマーキングが適用されます。

保守部品や特注産業機器のCEマークは必要ですか?

補修部品・特注産業機器は原則CEマーキングの対象外です。ただし、RoHS指令への対応は必要になるため注意する必要があります。

研究目的で使用する機器や特注産業機器のCEマークは必要ですか?

研究目的で使用する機器・特注産業機器はCEマーキングの対象外です。ただし、「研究目的」とはその機器そのものを研究することを目的とするものであり、その機器の性能や機能・特性を評価する場合に限られます。機器を量産してさまざまな研究室に納入するような場合は、「研究目的」とは異なるためCEマーキングの対象となります。

欧州へ輸出するeコマース販売におけるCEマークの取り扱いについて教えてください

CEマーキングは製造者が実施するものですが、NLF(新しい法的枠組み)において輸入・流通業者の責務が明確化されています。CEマーキング対応だけでは不十分となる場合があるため、詳しくは下記の規則をご確認ください。

参考:Regulation(EU)2019/1020

まとめ

CEマーキングはEU加盟国を中心とした32カ国で流通する多くの製品で必要です。しかし、保守部品や輸送手段、一般市場に流通するものでない特定機器などは適用対象外となる場合があります。適用対象か否かは、26種類の指令・規則を一つずつチェックして確認する必要があります。

複雑で判断も難しく、違反した場合には罰則も存在することから専門のコンサルティング会社に相談することがおすすめです。CEマーキング対応にお悩みの際には、一度相談することを検討してみてはいかがでしょうか。